2006年11月02日

花形歌舞伎へ行ってきた

11022006.jpg週末の始まりはエビちゃんです。 といっても海老蔵のほう… 事情も事情で、週末は都内にいないほうが多くなっているこのところですが、今回は3連休、おまけに紅葉狩りで交通渋滞はさけられないであろう目的地への道。 わざわざ地獄風呂に頭からつっこんで自業自得とわかりつつ暴れる…なんてことはしたかないので都内でまったりいたします。 

それに、今回の花形歌舞伎は観たい番組が満載。 もとい!海老蔵満載だし♪ 夜のチケットはすぐにとれたものの、昼のチケットは予定もたたず、チケット合戦にも破れてしまった…しょぼーん。 で、昼の部は今後なんとかしようと思いつつ、夜の部へ行きました。 (*あらすじ部分は新橋演舞場のサイトよりです。)

時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)

武智(明智)光秀が、主君小田春永(信長)に馬を洗う盥で酒を飲まされるところから、「馬盥」の通称でもおなじみの四世鶴屋南北作による演目です。春永は天下統一に向けて、毛利攻めのため、中国地方に赴く途中、京・本能寺に立ち寄ります。以前から光秀を疎ましく思っていた春永ですが、家臣の取り成しもあり、光秀の目通しを許します。参上した光秀に、春永は真柴久吉(秀吉)が献上した馬盥で酒を飲めと強要し、挙句の果てには久吉の配下になれと言い出す始末。光秀は屈辱に耐えながら、酒を飲み干し、宿所のある愛宕山に戻っていきます…。忍耐と執念の光秀を松緑が初役で勤め、海老蔵の春永、芝雀の皐月という好配役でご覧頂きます。

海老蔵演じる信長(春永となっとる。 以前行った文楽で知ったのだが、名前の一部をわかるくらいに変更して物語にするのだそうだ)の光秀へのそりゃ意地悪ぶりったら。 うーん、ここまでされたら本能寺焼かれちまうのも仕方がないと思わせる意地悪テンコモリのミルフィーユ仕立ての物語になっている。  長州小力の「キレてないっすよ!」的に我慢に我慢をかさね、最後の最後に花道で怒りが爆発してしまうところの演技が素晴らしかった。 松緑さんの額にでているであろう青筋、血管きれそうになるまでのキレぶりが素敵でした。

新歌舞伎十八番の内 船弁慶(ふなべんけい)

兄の頼朝に疎まれ、都を追われた義経は、九州へ落ち行く途中、摂津国大物浦に辿り着きます。義経は、ここまで帯同してきた愛妾の静御前と別れ、弁慶ら家臣と共に船出をしますが、そこへ、平家の武将・平知盛の霊が現れ、義経一行に襲いかかります…。能の『船弁慶』を題材にした「松羽目物」で、格調高く荘重な舞踊劇として有名な作品です。前半は、義経との別れを余儀なくされる静御前の哀しみを込めた舞、後半は、船出した義経一行を苦しめる平知盛の霊の迫力が大きなみどころで、ひとりで男と女、静と動を踊り分ける屈指の大曲です。昨年9月、厳島神社での公演で好評を得た菊之助が本公演では初めて挑む話題の舞台です。

本家「能」でも好きな番組です。 能からとられた演目を松羽目物(まづばめもの)と言うんだそうだ。 能舞台の鏡板(舞台正面の背景部分)に松の絵を描いてあるところから来ているそうだ。 なるほどね… こういう小知識も満載なイヤホンガイドはやっぱりためになるわなぁ。 鑑賞歴ピヨピヨな私はこういうことを知るのが楽しい。 舞台の背景画は派手派手な松の絵、その前に長唄の皆さんと音ものの皆さん。舞台下手の揚幕も上手の切戸口もあるので能チックですなあ。 お殿様仕様の能舞台と大衆文化の楽しみの歌舞伎舞台のどっちでも観劇できる今の時代に生まれて感謝だわよ。

静御前の舞と平知盛の鬼の舞、1人で舞い分ける2度美味しい楽しみもあります。 能だと静御前も亡霊になった平知盛も面をつける(のが多い)のですが、歌舞伎での、化粧でそれをどこまで近づかせるかが非常に興味深いです。 今回は席が遠かったので(おまけにオペラグラスを忘れた…ちっ)じっくり見ることができずに残念。 でも遠めからみても能面的な静御前と迫力ある鬼気のある亡霊な知盛でありました。 最後の「♪そーのーとーきー、義ぃ経、すーこーしーも、さわがず」で始まる平知盛と一戦交える弁慶と義経はかっこよいのう。

義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)

川連法眼館

『義経千本桜』の四段目の最終部分にあたることから、通称「四の切」とも呼ばれ、義太夫狂言の代表作のひとつとして、おなじみの演目です。静御前を守護して、義経のいる吉野にたどり着いた佐藤忠信ですが、もう一人、自分を名乗る武士が先に訪ねていました。不審がる静御前が問い詰めると、忠信は実は自分が狐であることを明かします。義経が静と伏見で別れた時に与えていた初音の鼓の皮がこの狐の両親のものだったのです。親を慕う狐に、義経は…。今回は、市川海老蔵が初役で狐忠信を勤めますが、市川猿之助の指導を得て、見ごたえのある一幕をご覧に入れます。

これは泣くねえ、毎回ジーンとするねぇ。 初めて義経千本桜の見たのは市川猿之助のNY公演だった。 当時はそんなに歌舞伎が見たいというよりは「ニッポン文化に触れられる! ワイヤー宙吊りでキツネの猿之助が飛ぶ♪」とそっちの興味のが多かったわけで、子狐の悲しみよりも「空飛んでるよ、すっげぃよぉ。」な感想だけだった…と思う。
その後何度となく色々な義経千本桜の四段目を見ている。 空を飛ぶのもあったし、飛ばないのもあった。いずれにしろ子狐の親への思いの場面ではジーンとする。

今回の海老蔵の鼓への愛着ぶり、喜怒哀楽の姿は若手役者ということもあってかとてもダイナミック。 独特のキツネ言葉で話すのでイントネーションが面白いのだが、笑っているその数秒後には「悲しいよねぇ、うんうん、親だもんねぇ…」と演じる姿にホロリとなれる。 クライマックスで小鼓を大切にかかえ、空高く飛んでいくところは本当に嬉しそうな小狐で、こっちも嬉しくなってきたのだった。 

いやぁ、どれもよかった番組でした。 そういや、義経千本桜は市川猿之助指導となっていたが、猿之助さんのご病状は大丈夫なのかしら。 空を飛ばなくてもいいからお元気な姿を拝見したいです。


Posted by toto at 2006年11月02日 23:48
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